2005 Fiscal Year Annual Research Report
農山漁村における家族ライフスタイルについての実証的研究
Project/Area Number |
17730310
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
片岡 佳美 島根大学, 法文学部, 助教授 (80335546)
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Keywords | 農山漁村 / 家族ライフスタイル / インタビュー調査 / 島根県 / Iターン / Uターン / 家族経営協定 |
Research Abstract |
本研究の目的は,農山漁村においてだれもが幸せな家族生活を享受できるための条件について考察することにある。これを追究するため今年度は,全国的にみて第一次産業従事者の多い島根県をフィールドにインタビュー調査を行ない,農山漁村の家族生活の実態を探った。I・Uターン家族,家族経営協定を締結している家族などを含む合計11家族の事例を集めることができた。 調査では,農山漁村で暮らす人びとの家族ライフスタイルがどのようにしてつくられているかに焦点を当てた。Iターンで都会から移住してきた人たちにおいては,地域の人びととの交流を通して自分たちの家族ライフスタイルを再編し,そこにより楽しい生活を見いだしているというケースがあった。このようなIターン者の経験は,家族ライフスタイル選択を私事的な問題として捉え自閉化する傾向がますます強まる今日の社会に対し問いかけを行なっていると言える。また,農山漁村家族の近代化のためにすすめられている家族経営協定は,必ずしも理想的に実現していないということが分かった。このような実態は,家族ライフスタイルの合理的選択が不可能であることを示唆する。さらに,地域社会についても,農山漁村は新しいあり方を呈示していた。確かに農山漁村においても義務的な地縁コミュニティは嫌がられ衰退しつつあるが,都市部と違って完全になくならず名残があるために,家族の福祉に貢献するボランタリーな地域社会づくりが可能となっていた。そして家族内部に目を向けると,農山漁村の家族は,規範というよりは家族成員たちが互いに他の成員を配慮しあうことによって家族ライフスタイルを主体的に選択していることがうかがえた。つまり,農山漁村家族は決して受動的・没個性的ではないのである。 各事例の概要とこれらの知見は報告書に取りまとめ,今年度末に刊行した。
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