2008 Fiscal Year Annual Research Report
農山漁村における家族ライフスタイルについての実証的研究
Project/Area Number |
17730310
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
片岡 佳美 Shimane University, 法文学部, 准教授 (80335546)
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Keywords | 農山漁村 / 家族ライフスタイル / 質的調査 / 量的調査 / 個人化 / 中山間地域 |
Research Abstract |
本年度は補助事業の最終年度にあたるため, 前年度までに実施した質的調査と量的調査の結果をもとに, 農山漁村(今回は過疎・高齢化が進む中山間地域をフィールドとした)の家族ライフスタイルについて総括的に議論することが課題であった。この課題を達成するために, とくに, 量的調査データの詳細な分析と, 質的・量的調査それぞれの知見の関連づけに重点的に取り組んだ。最終的に, (1)家族集団のまとまりの維持が, 中山間地域での生活に適応するための手段として非常に重視されている, (2)家族集団のまとまりを安定的に維持するために個々の家族成員の自由が尊重されている, (3)夫婦で生きがいを共有するという人は, 抽象的で「在ること」に関することがらを生きがいと考えており, そのような捉え方はそれらの人たちが作り出す家族ライフスタイルに起因する, (4)年齢が高くなるにつれ, 夫婦間での葛藤解決方法が性役割規範から自由になり, また, 家族内で個人の自由を尊重することと家族集団に対する義務を強調することが両立するようになる, といった仮説を呈示することができた。現代家族について論じた先行研究では,家族集団より個人を優先する「個人化」が進展しているという議論, また, 「個人化」の結果として新しい家族の連帯が生まれつつあるという議論があるが, 本研究が扱った中山間の農村家族については, そうした枠組みでは説明しきれないということが示唆された。個人が中山間地域のような農村部で生きていくために他の家族成員たちが必要とされることが, 他者に対する寛容を生ずるという今回の知見は, 個人の自由と集団への責任のバランス問題を解決するための, 新しい共生のありようを呈示するものとなりうるのかどうか。この点は, より精緻なデータに基づく分析によって検討する価値があると考える。なお,本研究の総括的な議論については, 報告書に取りまとめ, 本年度末に刊行した。
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Research Products
(1 results)