2006 Fiscal Year Annual Research Report
視覚メディアの図像学的分析を通じたファシズムの比較歴史社会学的研究
Project/Area Number |
17730324
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
田野 大輔 大阪経済大学, 人間科学部, 准教授 (60330122)
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Keywords | メディア / ファシズム / ナチズム / 政治文化 / 歴史社会学 |
Research Abstract |
平成18年度は、さしあたり研究対象をナチズムの政治文化に絞り、これまでの研究を発展させるとともに、本格的に視覚メディアの図像学的分析に着手し、研究成果の出版のための準備を行った。 理論研究の面では、前年度に引き続き政治文化論・メディア社会論の理論的基礎づけを進め、フランクフルト学派・保守革命派を中心としたドイツの社会理論の検討を行い、「政治の美学化」とロマン主義の関係をめぐる問題を考察したほか、視覚メディアの図像学的分析の手法を検討し、ファシズム研究に応用可能な理論的枠組みを整備した。 歴史研究の面では、ナチズムの政治文化に関する比較歴史社会学的研究を進め、新聞、雑誌、映画、絵画、彫刻、ポスターなど、各メディアに見られる「指導者」「大衆」「共同体」のイメージの図像学的分析を行うとともに、文化政策・社会政策との関わりについても考察した。また、そのためにドイツへ赴き、ベルリン連邦文書館、ベルリン国立図書館等で文献・史料の調査を行った。とくに視覚メディアを中心とした文献・史料については、イメージスキャナを使ってマイクロフィルムや印刷物のデジタル化・データベース化を進めた。 以上の研究・調査により、ナチズムの「政治の美学化」がロマン主義の影響を強く受けつつも、これとは微妙な関係に立っていたことが明らかになり、その研究成果を学術論文として公表した。また、ナチズムのメディア戦略を含めた「政治の美学化」に関するこれまでの研究成果をまとめた著書を完成させ、出版に向けた校正作業等の準備を行った。この著書は平成19年6月の刊行予定である。
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