2005 Fiscal Year Annual Research Report
パネルデータ調査の発展を受けての失業・貧困化理論の再検討
Project/Area Number |
17730333
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
深井 英喜 三重大学, 人文学部, 講師 (10378276)
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Keywords | 福祉国家 / イギリス / ブレア労働党「第3の道」 / 社会的排除 / 所得分配・所得再分配 |
Research Abstract |
当研究の本年度における研究計画は、資料およびデータの収集を主にしていた。この研究計画に則り、本年度の研究成果は、主にこれまでの研究を整理したものとなった。 2005年度に公表した成果としてはまず、(財)法律扶助協会編『リーガル・エイド研究』第11号に論説「福祉国家論における社会的排除概念の位置づけと可能性-イギリス「第3の道」路線を題材として-」を発表した。この論説は、ブレア労働党政府における社会的排除概念の規定を題材として、貧困を社会的排除としてとらえる近年のヨーロッパにおける貧困観は、これまでの福祉国家政策において想定された貧困観とどのように異なるのかを整理したものである。 また、まだ未発刊であるが、福祉国家関連をテーマにする若手研究者たちと、共著『福祉国家と経済思想史(仮題)』を計画し、これに「サッチャー・ブレアの挑戦(仮題)」と題する論考を寄せた。この論説は、福祉国家政策について日本ではこれまで政治学的アプローチが中心であったことの限界点を問題意識に、政策・政治の背景となる経済理論およびその根幹を規定する思想に着目する手法をとることによって、1980年代以降において福祉国家が直面している問題と、それへのイギリス福祉国家の取組みの特徴を明確にすることを試みたものである。 上記の論文執筆とその問題意識を踏まえつつ、本年度は、ロンドン大学やブリストル大学において収集され発表されてきた、パネル調査法を用いた貧困調査に関する資料の収集を行ってきた。特に、イギリスにおける所得分配および所得再分配のメカニズムが70年代以降どのように変化してきたのかを示すデータ、またIT技術の普及や経済のグローバル化にともなって労働市場がどのように変化し、それが労働分配率等にどのような影響を与えてきたのかを示すデータを中心に収集した。来年度以降、これらの資料の分析を進めることによって、80年代以降のイギリスの福祉・社会保障政策および税制などの福祉国家政策がもつ特徴やその成果について、数値による厳密な検討が可能となるだろう。
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