2005 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルワーク理論における価値論の体系化-「物語モデル」による実践的研究-
Project/Area Number |
17730357
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
松倉 真理子 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (90390145)
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Keywords | ソーシャルワーク / 価値 / 物語モデル |
Research Abstract |
本研究は、社会福祉援助(ソーシャルワーク)サービスを受ける利用者の多様な生のあり方を肯定し包含する「利用者主権」という観点から、「物語モデル」と呼ばれる援助理論を軸とした実践的研究を行うことを通じて、ソーシャルワーク理論における価値の問題について論究することを目的としている。 ソーシャルワーク理論研究において、その本質を問おうとしたとき、「技術・方法」や「制度・政策」という視点からは様々に論じられてきたが、その「価値」について議論されることは少なかった。しかし、援助現場でさまざまな「事件」や「不祥事」が噴出する昨今の事態は、可視的手続きとしての「技術論か、制度論か」という議論の枠組みそのものに限界があることを示しているのであり、後期近代社会が進行する現況では、もはや「ソーシャルワーク=善」「専門家=正義」は必ずしも人々の信頼するところではなくなりつつあることが危惧されている。この際、あらためてソーシャルワークを「価値の実践」として「ソーシャルワークは何を標榜してきたのか」「専門職ソーシャルワーカーとは誰か」といった根元的な自己問直しの必要がある。 本年度は、資料に基づき理論史、事業史の先行研究を抽出し、手がかりとしての「物語」の視点から、「適応矯正」という近代ソーシャルワーク理論に組み込まれた<日常的身振り>(ハビタス)の系譜について問い直した。特に利用者へのまなざしの形成と専門職ソーシャルワーカーの社会的アイデンティティ獲得との関連について考察した。またこのなかで、90年代以降のソーシャルワーク理論に、「物語」論が出現することの必然性とその位置づけについて論及した。さらに、本研究が捉えるべき外延について整理し、射程とすべき論点の配置を試みた。なお、研究内容の一部を、学会において口頭発表した。
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