2006 Fiscal Year Annual Research Report
ソーシャルワーク理論における価値論の体系化-「物語モデル」による実践的研究-
Project/Area Number |
17730357
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
松倉 真理子 福岡教育大学, 教育学部, 助教授 (90390145)
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Keywords | ソーシャルワーク / 価値 / 物語モデル |
Research Abstract |
本研究は、社会福祉援助(ソーシャルワーク)サービスを受ける利用者の多様な生のあり方を肯定し包含する「利用者主権」という観点から、「物語モデル」と呼ばれる援助理論を軸とした実践的研究を行うことを通じて、ソーシャルワーク理論における価値の問題について論究することを目的としている。 ソーシャルワーク理論研究では、そのあり方として方法や政策という視点からは様々に論じられてきたが、「知」として議論されることは少なかった。しかし、標榜する価値や理念の拡散、高度情報化・消費化といった後期近代社会が進行する現況では、「善としてのソーシャルワーク」への信頼はもはや相対化され、援助者の優位性や傲慢さはいつでも異議申し立てにさらされる。以前なら利用者の泣き寝入りで終わっていた事件や不祥事が露呈することも屡々である。この際、あらためてソーシャルワークとは何に価値をおく知であったのかといった根元的な自己問直しの必要がある。 本年度は、昨年度おこなった、本研究が捉えるべき外延について整理と、射程とすべき論点の配置に基づいて、引き続き、手がかりとしての「物語」の視点から、「適応矯正」という近代ソーシャルワーク理論に組み込まれた<日常的身振り>(ハビタス)の系譜について二つの側面から問い直した。第一に、さまざまな新しい援助法の出現の動向とその理論・手法についての考察を踏まえて、伝統的援助法との対比から、物語を鍵概念として新援助法を理解するための基本的視座を検証した。第二に、伝統的援助法が今日的状況おいて問い返されることの意味について問題提起した。「障害者自立支援法」など最近の社会福祉の関連法や資格制度等をめぐる動向に触れながら、利用者・対象者への扱いにかんする言説(物語)をめぐって、今後のソーシャルワーク理論においてどのような方向性が求められるべきなのかについて考察した。 なお、研究内容の一部を、学位請求論文としてまとめ、研究概要についての公開講演会を実施した。
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