2006 Fiscal Year Annual Research Report
流域環境開発をめぐる専門家と一般住民の対話システムの構築
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17730364
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
永田 素彦 三重大学, 人文学部, 助教授 (60271706)
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Keywords | 社会系心理学 / 環境開発 / 環境価値 / 合意形成 / 協同学習 |
Research Abstract |
本年度は、第1に、昨年度実施した「流域環境に関する関心事調査」の分析を進めた。具体的には、対象者を流域環境の価値や機能への関心の程度をもとにクラスターにわけ、流域環境での活動経験や環境保全活動への参加意図との関係を分析した。森林・農地・水系いずれの環境に対しても関心が高いクラスターは、活動経験が多く、保全活動への参加意図も高かった。対照的に、関心・経験・意図ともに低い低関心クラスターが最も大きなクラスターを形成していた。その他、森林、農地、水系への関心がそれぞれ高いクラスター、「自然とのふれあい」に高い関心をもつクラスターが見出された。結果は、日本グループ・ダイナミックス学会、日本社会心理学会で報告された。 第2に、昨年の調査を踏まえ、朱鞠内湖集水域の流域環境に深い関わりのある職業従事者17名を対象としたインタビュー調査を実施し、流域環境の価値に関する言説を収集・分析した。その結果、(1)環境の価値に関する言説には、環境倫理学の分野における直接的利用価値、間接的利用価値、内在的価値、本質的価値の分類にはおさまらないタイプの言説があること、(2)これらの言説の背景にある人間-自然関係として、相互作用的関係と相互浸透的関係の2通りがあること、を見出した。廣松渉の物象化論の視点から、環境に関するさまざまな価値は、相互浸透的関係に基づく「価値以前的な価値」に由来することを考察した。これらの結果は、日本グループ・ダイナミックス学会、アジア社会心理学会などで報告予定である。
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