2005 Fiscal Year Annual Research Report
組織のリスク管理における情動体験共有の効果に関する実験的研究
Project/Area Number |
17730368
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
増地 あゆみ 北海学園大学, 経営学部, 助教授 (00322777)
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Keywords | リスク管理 / 情動反応 / 人的エラー |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)組織で生じ得るリスク事象体験に伴う個人レベルでの情動反応を把握したうえで、(2)リスク事象に伴う情動体験を組織内で共有することにより、個人のルール遵守行動やリスクへの適切な対処・予防行動、ひいては組織的リスク管理への自発的参加をどの程度促進するかを明らかにすることであった。本年度は、実験の予備調査として、組織において生じるリスク事象の事例を収集した。対象となったのは医療・看護、福祉、建設、印刷、飲食業の業種で働く社会人11名であった。これらの方たちに、質問紙を用いて、これまでに体験したリスク事象(ヒヤリ・ハット体験、負傷事故など)の具体的事例を想起し、その詳細を記述することを求めた。事例としてあげられたリスク事象の総数は23例であった。これらのリスク事象のほとんどは人的エラーが関与して生じたものであった。たとえば、医療現場における注射用と内服用の管の取り違え、飲食店で漂白剤と洗剤の取り違えなどで、その事故や誤りが生じたメカニズムは、日常的なうっかりミスと同様のものであるが、その結果において重大な事態を引き起こしていることが明らかになった。どの事例においても、個人としては自分が起こした事故を二度と起こさないように、その後何らかの予防策をとっていることも明らかになった。 実験計画では、さらに協力が得られれば、これらの体験を想起し再生している間の情動反応を測定させていただき、これを「リスク事象の体験に伴う情動反応」の基礎データとすることを予定していたが、残念ながら今年度はここまでの協力を得られなかったため、次年度は実験への協力者を得て実施したいと考えている。万が一、生体情報測定装置による情動反応測定への協力が得られなければ、POMSなどの情動測定の心理検査で代用することを検討する。現在は、予備調査で収集したリスク事象を材料とし、リスク事象の特徴とそれを伝え聞いた個人の情動反応との関係を調べる実験に先立ち、予備調査を実施中である。
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