2006 Fiscal Year Annual Research Report
組織のリスク管理における情動体験共有の効果に関する実験的研究
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17730368
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
増地 あゆみ 北海学園大学, 経営学部, 准教授 (00322777)
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Keywords | リスク管理 / 情動喚起 / 人的エラー / 隠されたプロフィール |
Research Abstract |
本年度は、他者のリスク体験に関する情報が集団内で共有化されるプロセスに、情動喚起的な情報の有無が及ぼす影響を調べる実験を行った。実験はStasser (1992)の"隠されたプロフィール"実験の枠組みを用いて行われた。実験にはH大学の学生168名が参加した。実験課題は、「アルバイト先で電気ストーブを全社的に購入するにあたり、機種選定の作業に加わること」で、2種類のストーブ(A・B)の性能や事故情報を吟味したうえで、(1)個人としての決定を示し、その後、(2)3名1グループで議論し、集団としての決定をすることであった。実験では、ストーブの性能および事故に関する情報の数と種類によって4条件が設定された。共有条件では、3名にストーブAの事故情報が7件、ストーブBの事故情報4件が示された。その他は非共有条件で、ストーブAの事故情報のうち、1件は3名が共有していたが、その他6件は1名に2件ずつしか示されなかった。さらに非共有条件では、共有されない情報の種類によって、客観的事実のみ(低情動)、事故による火傷の記述あり(中情動)、火傷の記述とその写真あり(高情動)の3条件があった。集団内で共有されない情報は隠れてしまうのであれば、個人でも集団でも、共有条件ではストーブBが選ばれるが、非共有条件ではストーブAが選ばれることが予測される。ここで、共有されていなくても、強い情動を喚起する情報があれば、それは隠れずに集団の議論で話題となって共有され、集団ではストーブBが選ばれることが予測される。結果は、共有条件では予想と一致して個人(40/42)でも集団(13/14)でもストーブBの選択率が高かった。非共有条件では、低情動条件で、個人でのストーブAの選択率(14/42)が少し高まり、中情動(10/42)と高情動(7/42)でもやや上がった。集団では、全条件でストーブBの選択率が高かった(低情動:13/14、中情動:13/14、高情動:12/14)。この結果から、共有されない情報が客観的事実のみであっても、集団での議論では共有され、決定に反映されたといえる。これらの情報による情動喚起の度合いを調べ、集団での共有プロセスとの関連を検討する必要がある。
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