2005 Fiscal Year Annual Research Report
流産・死産などの「誕生死」体験者の心のケアに必要な対人コミュニケーション・スキル
Project/Area Number |
17730374
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
増田 匡裕 高知大学, 人文学部, 助教授 (30341225)
|
Keywords | 喪失体験 / 非公認の悲嘆 / 流産・死産・周産期死亡 / 医療コミュニケーション / ソーシャル・サポート / 意味の共有 / 対人ネットワーク / コミュニケーション・スキル |
Research Abstract |
3年度にわたる研究計画の初年度である今年度の研究活動は、リサーチ・クエスチョンの明確化のための準備作業が主となった。子どもを亡くした遺族のピア・サポート・グループの会合と医療従事者の研究会の両方に出席することで、「誕生死」の当事者を再定義することが急務であることが判明した。すなわち、従来の研究は遺族(自動的に母親を含意し、これを再考することも本課題の目的である)のサポートを検討することに集中する余り、医療従事者の「心のケア」に関しては無関心であり、後者のコミュニケーション・スキルを検討することも、あくまでも遺族の感情に留意することのみが問題とされてきた。しかし「ケアする人へのケア」のシステムが確立していない限り、遺族と医療従事者とのコミュニケーション不全は解決されないことは明らかである。また遺族側についても、この問題の性質上、自身の主張が無謬性を暗黙の前提としていることに気が付きにくいため、一方的な主張を医療従事者もしくは他の遺族に対して突きつけることに終始する傾向がある。従って、遺族の対人ネットワークにおけるサポート・システムを有効なものとするためには、遺族をケアする立場の人々を「誕生死の当事者」に含めるべく概念を再構成し、新たな当事者の心理過程や意味生成過程を明らかにして、喪失体験を遺族とも共有可能なものにする必要がある。今年度は次年度に医療従事者を対象とした質問紙を主体とする探索的な調査を行う計画を準備し、協力を仰げる医療機関・団体とのリエゾンに専念した。デリケートな問題を扱う本研究の成功のためには、慎重な準備が必要である。実際、この年度内にも研究協力者の候補が幾つか現れては様々な事情で消えてしまい、「相手本位」の研究の困難に直面することが多かったが、逆に言えば、性急な活動を行わない態度を持ち続けたおかげで倫理上の問題に抵触せずに済んだと言えよう。今年度の具体的な支出は、喪失体験の当事者の問題とケアする人のケアを検討する研究会等への出席のための旅費に充てられた。また情報の収集と整理のためにノート・パソコンとソフトウエア及び外部機器を購入した。
|