2005 Fiscal Year Annual Research Report
算数・数学の学習を支える言語的・非言語的表象の発達
Project/Area Number |
17730376
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺尾 敦 北海道大学, 脳科学研究教育センター, 学術研究員 (40374714)
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Keywords | 教育心理学 / 数学教育 / 数表象 / 計算 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目的は,正の数・負の数の加法・減法における,言語的・非言語的表象の役割を明らかにすることである. 正の数・負の数の加法・減法において,正しい計算の習得に困難を示した中学1年生の事例から研究を始めた.認知的課題分析によって可能な解法を明らかにし,誤りの観察からこの生徒がどのようなバグ・ルールを用いているかを同定した.さらに,SNARC効果を利用して,この学習者が持つ心的数直線が十分に成熟したものではないことを明らかにした.知識と表象についてのこういったアセスメントに基づいて,もっとも効果的と思われる教授介入を行った.この事例は,正の数・負の数の加法・減法における困難の一因が,非言語的表象である心的数直線の未成熟にあることを示唆する. 次に,最終的にどのような計算方略が獲得されるのかを明らかにするため,大学生を被験者として計算課題を行った.ある特定の計算方略を用いたときに,問題のタイプによって計算時間にどのような差が生じるのかの予測を導いた.数え上げのような加数の大きさによって反応時間が変化する方略や,減法を加法に直す時間を要する代数和の方略(これは中学の教科書で教えられる方略である)は用いられていないことが示された.獲得される計算方略を同定するために,さらに実験を行う予定である. 現在,計算課題とSNARC課題を用いたfMRI実験が進行中である.いわゆる言語野の活動と,心的数直線に関与しているとされる頭頂間溝や上頭頂小葉の活動に注目して,この課題の遂行に用いられている表象を明らかにしたい.
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