2005 Fiscal Year Annual Research Report
集団内の幼児による会話の組織化過程の微視的分析:参加役割の取得と付与に注目して
Project/Area Number |
17730377
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 崇 北海道大学, 大学院・教育学研究科, 助手 (20360878)
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Keywords | 言語発達 / 言語運用能力 / 参加構造 / 会話分析 / 幼児 |
Research Abstract |
本研究では、3人以上の集団で交わされる会話に幼児がどのように参加するのかという問題を設定した。特に、会話の「話し手」や「聞き手」、「会話に参加していないが話は聞いている者」といった相互行為上の役割の配置(参加構造)に注目し、役割の獲得や付与が実際の会話の中でいかにして達成されているのかという問題を設定した。これらの問題について、幼児が生活する家庭と幼稚園という集団規模の異なる2つの社会的環境における自然会話の比較を通して、主として自然観察法を用いて明らかにすることを目的とした。 17年度は、4歳男児を含む1家族からの協力を得て、家庭内での会話、およびその男児の幼稚園での会話を、半年にわたって縦断的に収集した。 17年度は主として家庭内会話における4歳男児の言語運用能力にしぼった分析を行なった。その結果、以下の2点について知見が得られた。 1 「聞き手」を獲得するために採用される戦略:男児の用いていた言語形式の切り替えにともなって、その発話に対して返答する責任を持つ者(「聞き手」)の切り替えが起きていたことが明らかになった。例えば、「ね」などの間投詞や丁寧体の使用にともない、母親が「聞き手」としての役割を引き受けていた。 2 自分が「聞き手」であることを知るための手掛かり:男児が、大人の発話が自分に向けられたものかどうかを判断する手掛かりとして、発話と同期する視線を手掛かりとして利用していた可能性が示された。例えば、男児が父親に背を向けている場合、父親の発話に男児が振り返ったとき、父親が彼の方を見ていたならば両者のあいだで会話が続いた。逆に、父親が男児の方を見ていなかったとき、会話は続けられなかった。 以上は1つの家族の会話データから得られた知見であった。18年度は、17年度に得られたデータの分析をさらにすすめるとともに、新たに別の家族の会話データを収集する予定である。
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