Research Abstract |
本研究では,幼児が,行為主体が誰なのかによってその行為の模倣行動を変化させるのかどうかに注目し,2歳児が,母親の行為と見知らぬ他者の行為を見たときの模倣行動について検証した.被験児は2歳児24名であった.実験は,保護者の同意のもとでおこなわれた.実験の各試行は,2つのフェイズから構成された.まず,対象操作提示フェイズでは,被験児に対し,特定の対象操作を提示した.その直後から反応フェイズがはじまり,ここでは,被験児に対し,先と同じ対象が渡され,その反応が観察された(1分間).このような試行は,各被験児に対し,6試行おこなわれた(対象は各試行で異なった).それぞれの対象操作には,2つのステップがあった.6試行のうち3試行は,2つのステップの両方が,興味深い結果(行為の目標)を起こすために必要であった(複操作必然条件).一方,残りの3試行は,2つ目の操作だけが結果を起こすために必要であり,1つ目の行為は不要であった(単操作必然条件).これらの操作を,半数の被験児に対しては母親が,もう半数の被験児に対しては女性の実験者が提示した(母親群と見知らぬ他者群).群ごとに,両条件において,2つの操作とも模倣する反応,1つ目だけ模倣する反応,2つ目だけ模倣する反応の頻度を分析した.その結果,両群において,複操作必然条件では,2つの操作を模倣する反応が他の反応よりも有意に多かった.一方,単操作必然条件では,群ごとに異なる傾向が見られた.母親群では,2つ目の操作のみを模倣する合理的な反応が有意に多かったのに対し,他者群では,2つの操作を模倣する反応が有意に多かった.これらの傾向は,2歳児が母親の行為と見知らぬ他者の行為を区別していること,見知らぬ他者の行為については,必然な行為かどうかに関わらず模倣する傾向があることを示唆する.一見不思議なこの傾向の理由について探るべく,更なる検証を続けたい.
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