Research Abstract |
本研究では,先行研究を踏まえ,乳児における他者の意図性,とくに目標指向性を測定する3つの模倣課題を作成し,12ヶ月児と18ヶ月児,計52名を対象に実験をおこなった。とくに,各課題における月齢差,課題ごとの成績間の相関に注目し,生後2年目における他者の行為の理解と社会的学習の様相を明らかにすることを目的とした。 実験は,静岡県袋井市内の保健所で,保護者の同意と同伴のもとでおこなわれた。各実験では,実験者が次の3つの対象操作を被験児の目の前で実演し,その直後に被験児に同じ対象を渡したときに,行為の模倣がおこるかを調べた。1つ目の課題では,実験者は,ライトのスイッチ(箱のふた)を額で押し,ライトを点灯させた。2つ目の課題では,実験者は,箱の前面の取っ手を回転させて,箱のふたを開け,箱の中にある筒に棒を差し込んだ(すると,内蔵されたおもちゃから音声が流れた)。3つ目の課題では,実験者は,小さなイヌのおもちゃをはねさせる,またはすべらせるように動かし,それを家の中に入れた(家を取り外し,小さなイヌのおもちゃをただはねさせる,またはすべらせるように動かす条件もあった)。実験終了後,2名の評定者が,実験の模様を記録したビデオ映像を用いて,実験中の被験児の反応を再度観察し,得点化をおこない分析した。実験の記録と分析は,科学研究費で購入したDVカメラおよびノート型PCを用いておこなった. 実験の結果,両月齢の被験児において,実験者の行為の模倣が見られた.実験者の行為のすべてを模倣する反応と,異なる手段を用いて同じ結果を起こす反応の両方が見られた.これらの反応は,目標指向性の理解のサインであると考えられる.しかし,今回の結果からは発達差は明らかにならず,また予想されたような各課題の成績間の相関関係も有意にならなかったことなど,今後検証すべき問題が残った,
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