2006 Fiscal Year Annual Research Report
親役割と仕事役割の有無が夫婦関係の形成と充実感、生涯発達に及ぼす影響
Project/Area Number |
17730395
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
小泉 智恵 国立精神・神経センター, 精神保健研究所社会復帰相談部, 外来研究員 (50392478)
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Keywords | 親役割 / 仕事役割 / 多重役割 / 夫婦関係 / 不妊 / 妊娠・出産 |
Research Abstract |
研究1、研究2;親役割従事を対象とした大規模縦断調査では、平成14,15年度に第1子を出産予定の夫婦総計約1000組を対象として、妊娠期、出産後6ヶ月、産後1年、2年、3年時点の調査を実施した。発表はデータ回収終了した妊娠期から産後1年時点分の統計解析を中心的に行なった。第1に、妊娠期の仕事役割の状況が、産後6ヶ月時点の配偶者の親となる意識の形成に影響を及ぼすこと、産後6ヶ月時点の仕事役割の状況、仕事と家庭の多重役割が産後1年時点の配偶者の親となる意識の形成に影響を及ぼすことを明らかにした。特に、夫の職場の家庭に対する理解、能力発揮、裁量性が多いとき、後の時点の妻の子育てに対する制約・負担感が減少し、親となることによる視野の広がりが増加した。妻の過重労働が少ないとき、後の時点の夫の親となることによる柔軟性が増加した。第2に、妊娠期の働き方と心理的健康との関連を検討し、仕事役割の状況で人間関係の問題が少ないこと、多重役割で仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバー、家庭から仕事へのネガティブ・スピルオーバーが少ないことといった場合、心理的健康度は無職群より高かった。また、能力発揮が多くできること、家庭から仕事へのポジティブ・スピルオーバーが多いことといった場合、無職群より充実した生活感情をもつことができた。妊娠期は仕事の状況に配慮することで、高い心理的健康度を保つことができることを明らかにした。 研究3、研究4;親役割非従事を対象とした大規模調査では、最近の不妊ストレスを特定した結果、最も多かった順に、治療に対する不安、仕事と治療との両立、配偶者との関係、配偶者の親との関係、妊娠に対する不安などであった。次に、そのストレスに対して用いたコーピングを分析した結果、治療や妊娠での不安は、自分で自分を励ますといった情動焦点型対処を用いやすく、仕事と治療との両立といった職場や仕事の状況に左右されやすいものや、配偶者の親、医師といった少し距離のある人間関係では「物事の明るい面を見ようとした」といった情動焦点型的対処を用いやすく、配偶者や自分の親といった近しい人間関係では「現在の状況を変えるよう努力した」といった問題焦点型対処を用いやすかった。
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