2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730397
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
吉村 聡 東北大学, 大学院・教育学研究科, 講師 (60329117)
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Keywords | ロールシャッハ・テスト / eyeサイン / 対人過敏特性 |
Research Abstract |
本研究では、ロールシャッハ・テストにおけるeyeサインの分析を通して、青年期の対人過敏特性に関する検証を行った。被検者は青年期健常群と臨床群(神経症/人格障害)で、各群40名だった。 結果、eyeサインの出現頻度について群間での有意差は認められなかった。このことから、青年期の被検者にロールシャッハを実施した場合、その解釈に際してはeyeサインの扱いに慎重を期する必要があること、この時期の対人過敏傾向は必ずしも病的とは言えないことが明らかになった。 一方、ロールシャッハ諸変数との相関関係からこのサインが意味する心理特性を探ってみると、いくつかの特徴が認められた。健常群におけるこのサインは、感情統制に意を汲む傾向(FC-(CF+C))等と正の相関関係にあるとともに、肯定的な対人関係を期待する傾向(COP)等と負の相関にあること等が明らかになった。一方の臨床群におけるeyeサインは、病的な思考(WSum6)、怒りを原因とした統制不良(S-)、心気症的傾向(An+Xy)等と正の相関にあることが明らかになった。また、健常群は臨床群に比べて、一次過程思考(Holt,1977)を伴わないeyeサインが有意に多く出現することも示された。以上の結果から、eyeサインに示される青年期健常群の対人過敏特性は、「周囲の目が気になる」などの神経症的な傾向や、対人関係における少しばかりのぎこちなさを示唆するものと考えられるが、臨床群とは思考や認知の崩れを伴っていない点で大きく異なることが明らかになった。特に健常群は臨床群とは異なり、対人緊張が刺激される場面においても原始的な欲動が発露されずに冷静な思考や感情の働きが維持される傾向にあることは、健常群の適応を鑑みる上で注目すべき結果であったと言える。
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