2006 Fiscal Year Annual Research Report
怒り経験の言語化による怒り制御プログラムの開発:臨床社会心理学的観点から
Project/Area Number |
17730398
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
湯川 進太郎 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 助教授 (60323234)
|
Keywords | 怒り / 言語化 / 筆記開示 / 血圧 / 反すう / ワーキング・メモリ / 感情調整 / 臨床社会心理学 |
Research Abstract |
本研究の目的は,日常の怒り感情を日記式に筆記開示することによって,心身の安定と健康の増進をもたらすかどうかを実験的に検証し,怒りの制御に向けた簡便かつ安価なプログラムを開発するための基礎データを得ることであった。 13名の大学生を無作為に実験群・統制群・偽薬群のいずれかに配置し,実験群には4週間に渡って怒り経験を筆記させた。その際,出来事の客観的な記述と,抱いた感情や思考の記述とを分けて行うようにした。統制群の参加者にはその間,特別な指示は与えなかった。これら実験群と統制群に加えて,偽薬群(健康増進効果があると教示してガムをかませる群)を設けた。実験操作(介入)前後と操作終了6週間後のフォローアップ時に効果測定を行った。効果測定として,ネガティブな反すう・怒りの持続しやすさ・特性怒りの質問紙を実施した。また,ワーキング・メモリ,血圧の測定も同時に行った。 その結果,統計的に有意ではなかったものの,筆記群において,ワーキング・メモリの増大・ネガティブな反すうの低減・怒りの持続しやすさの低減などが見受けられた。先行研究(荒井・湯川,2006)との結果の一貫性から,怒り経験を日記式に筆記開示することによって,中長期的な効果として,感情を制御する力や心身の健康が向上する可能性が示唆された。ただし,特性怒りや血圧などの比較的恒常性の高い性質までは効果が至らなかった。 現時点において,国内外ともに怒り経験の筆記開示研究は極めて少ないことから,プログラム開発に向けて,今後さらに実験データを積み重ねていく必要があるだろう。
|