Research Abstract |
本年度は,認知的バイアスの具体例として,確証バイアスを取り上げ,2-4-6問題,新エリューシス課題と呼ばれる規則発見課題を用いて,課題解決パフォーマンスと方略との関係に関する分析を行った。実験には,標準的な仮説検証課題の手続きを用い,実験参加者には,毎回,未知の事象に共通する法則性を発見するため,仮説の生成,事例情報の収集,仮説の評価を行うよう求めた。収集された事例情報は,その時点で保持されていた仮説(群)との関係から,正事例,負事例,診断テスト,非診断テストの4種類に分類された。診断テストは,複数の仮説が立てられている時に,仮説群からより確からしい仮説を抽出することを目的とした検証であり,この種の検証は,検証の序盤では比較的多く行われるが,終盤では選択頻度が低下する。正事例,および負事例は,単一の仮説に対する検証であり,これら2種の検証は,序盤よりも終盤の方が選択頻度が高かった。以上のことから,少なくともわれわれの仮説検証過程は,2つの段階に分けられ,複数の仮説群から,より確からしい仮説を抽出する段階,および,抽出された仮説の蓋然性を高めるための詳細な検討を行う段階から構成されることが示唆される。また,正解に到達した実験参加者は,到達できなかった参加者に比べて,特に,終盤での負事例の選択頻度が高く,ロジスティック回帰分析の結果,終盤において負事例を多く選択することが,課題解決に寄与していることが明らかとなった。この結果から,規則発見課題(あるいは,それを包括する概念としての帰納的推論)では,自身の仮説に沿わない検証を行うことが,より良い解決パフォーマンスを導くことが示唆される。
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