Research Abstract |
平成18年度は,平成17年度に引き続き,顔の布置情報および特徴情報の類似度が言語陰蔽効果(verbal overshadowing effect;再認前の言語的符号化が顔の記憶に妨害的に働く現象)の生起にどのような影響を及ぼすかについて検討することが目的である. 平成17年度の実験では,作成した顔画像の質的な問題,再認成績の水準の問題など,複数の可能性によって,仮説通りの結果が示されなかったため,特に,顔画像刺激の改良と実験手続きの改善(記銘時間の操作)を行った上で,次のような実験を行った. まず,顔画像の類似度の操作は,平成17年度に行った実験とは異なる顔写真セットを用意した上で,コンピュータ上で,モーフィング技術を用いて行い,ターゲットに対して,「布置情報の類似度のみが高い」,「特徴情報の類似度のみが高い」,「両方の類似度が高い」,「両方の類似度が低い」ディストラクターを,それぞれ8枚用意した.次に,これらの刺激を用いた具体的な実験手続きとしては,まず,学習時は,1枚の顔画像を5秒間で覚え,5分間の遅延の後,言語的符号化群の被験者は,顔を想起した上でその特徴を言語記述し,統制群の被験者は,顔の言語的符号化とは関連のない課題を行い,最終的に,強制選択方式の再認テストを行った. その結果,特徴情報と布置情報という両方の類似度が高いテストセットを再認テストで用いた場合のみ,言語的符号化による妨害効果が見られ,その他3つのテストセット群においては,そのような妨害効果は見られなかった.当初の仮説では,特徴情報の類似度のみが高いテストセットを用いた場合においても,妨害効果が見られるはずであったが,このような結果が得られなかった原因について,刺激や手続きなどに帰属されるものなのか,それとも,本来得られるべき結果であるのかを確認する必要があり,次年度以降の研究で検討されなければならない.
|