Research Abstract |
魅力は,生物学的に生き残るため,あるいは繁殖に適した相手を得るためのシグナルと考えられている.本研究は顔と身体の魅力の関連性について検討した.平成17年度の研究(1)では,処理判断の違いが顔の再認記憶に及ぼす効果について,顔の魅力度と人種という点から検討した.その結果,同人種の場合,高い魅力顔に対しては記憶成績がよいが,異人種の場合は,顔の魅力度の違いは見られなかった.同人種の魅力的な顔は,覚えやすいと同時に他の顔とも混同しやすいことがわかった.これは,同人種の魅力顔が我々の顔のプロトタイプとして位置づけられているという点から説明できる.次に研究(2)では,実験1で顔の魅力判断に及ぼす身体の影響について,実験2では体型判断に及ぼす顔の魅力の影響について,体型や体の向きによって反応時間に影響があるかどうかを検討した.実験1では,顔のみに注目して魅力度を評定するよう求めたにも関わらず,魅力判断に及ぼす体型や体の向きの影響がみられた.PETを用いた先行研究では,魅力的な顔がこちらを見ていると,報酬や期待に関係した脳領域が強い反応を示し,一方,非魅力的な顔がこちらを向くと,同様の領域が弱い反応を示すことが報告されている.実験1の魅力評定の結果は,痩せている非魅力的な人物が"モデル立ち"で自分を向いていると判断した場合,魅力度を低く見積もってしまうことを示唆している.実験2では,顔の美醜にかかわらず,体型のみに注目して判断するよう求めたが,体型判断に顔の魅力が影響することがわかった.これは,短時間で体型判断を求めた場合でも,顔の魅力を同時に処理している可能性を示唆しているといえよう.研究(3)では,顔の性別認知とボディの性別認知の際に,両者に何らかの影響があるかどうかを検討した結果,被験者の性別によって両者に非対称な相互関連性があることが示唆された.この結果を欧文雑誌に投稿準備中である.
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