2005 Fiscal Year Annual Research Report
高齢期における抽象的思考能力の病的変化及び正常老化の評価に関する研究
Project/Area Number |
17730442
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
稲垣 宏樹 (財)東京都高齢者研究・福祉振興財団, 東京都老人総合研究所, 助手 (00311407)
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Keywords | 実験心理学 / 高齢期 / 抽象的思考 / 健常老化 / 病的変化 |
Research Abstract |
行為遂行能力,判断力・問題解決能力といった抽象的思考能力は,認知症で低下する認知機能のひとつである.先行研究からこれらの側面が認知症の鑑別に有効であること,また,85歳以上の健常高齢者では,記憶,言語機能は低下する一方,抽象的思考や判断力は維持されることが報告されている.すなわち,記憶,言語機能の低下は病理的変化,健常老化の双方で示されるが,抽象的思考は健常老化では維持され病理的変化(認知症)で特徴的に低下が示される認知的側面であると考えられる.しかし,これらの能力は,記憶・言語機能に比べ,認知テストバッテリの観点からはあまり検討されていない.そこで,本研究では高齢者を対象とした簡便な抽象的思考能力評価尺度を開発することを目的とした.本年度は70-90歳代の健常高齢者を被験者として抽象的思考課題策定のための予備調査を実施し,健常老化による変化を検討した.対象者36名を70歳代20名,80歳以上16名に分け分析を行った.MMSE, WAIS-R知識,絵画完成,符号に加えて,抽象的思考能力を測定する項目として,「理解」「類似点」「相違点」「問題解決」「論理推理」に関する課題をWAIS-R等の既存の検査から選択し実施した.その結果,年齢群の比較では,結晶性知能の課題では成績に差はなかったが流動性知能の課題では70歳代に比べ80歳以上で低く,知的機能の加齢変化における従来の知見を追認する結果となった.抽象的思考能力課題ではいずれも年齢群で成績に差はなく,抽象的思考能力は健常老化では衰えないことが確認された.実施された課題から,両年齢群とも通過率が50%以上,かつ年齢群間で通過率に差がなかった21項目を暫定的に侯補として選択した.今後,これらの項目を認知症高齢者および健常高齢者に実施し,鑑別に有効な項目を選定する予定である.
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