2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17730455
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
白水 浩信 神戸大学, 発達科学部, 助教授 (90322198)
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Keywords | 養生論 / 身体論 / イギリス:フランス / 教育学 |
Research Abstract |
今日ほど「健康」が人々の関心を惹きつけ、かつあたかも流行のように消費される時代はない。その一方で戦争やテロリズムをはじめ、他者の生命への軽視がいよいよ深刻な時代を迎えている。教育の現場においても、生命の大切さをいかに教えていくかが焦眉の課題としてあり、その解決の糸口を探るべく、人は自らの身体といかに関係を保ってきたかというより根源的な視点にまで降り立ち、西欧の養生論の歴史を遡及することで、先人の「身体観」、「生命観」、「人間観」を明らかにすることが本研究の目的であった。 そのための基礎的作業として、初年度である今年は「養生法(diet)」をはじめとした養生論関連語彙を各国の国立図書館等のオンライン蔵書カタログを用いて検索し、関連文献のリストを作成することにした。その際、14世紀から16世紀頃まで英語の‘diet'は、今日の食餌療法・痩身法に矮小化された語義とは異なり、むしろ生き方(mode of life)そのものを意味していたことは注目に値する。近代初頭にはなお‘diet'はその語源にあるギリシア語‘διαιτα'(ラテン語)の系譜を忠実に引き継いでいたのであり、単に食養生のみならず、日常的な自分自身の生き方の問題に対応する語彙として用いられていたのである。この点に関して、近代の衛生的配慮がいかに伝統的な養生観と異なった視野から立論されているかについて詳細に明らかにすることができた。 伝統的な意味における養生論関連文献は、16世紀からから比較的多く出版されており、中にはOf the diet of the souleなど興味深いタイトルの文献も散見され興味深い。さらに古代ラテン語文献を網羅的に集成したデータベースを用いることで、古代以来の伝統的養生論の系譜を鳥瞰することが可能になった。これらの成果をリストアップし、次年度の海外渡航調査に役立てる準備はほぼ整えられた。今後、複写、マイクロフィルムでの入手、読解・分析が進められる予定である。
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