Research Abstract |
本研究の目的は,運動部活動への参加を通じて形成したライフスキルに対する信念を基に,生徒が時間的展望を獲得できるプログラムを開発し実践することである。その内本年度は,1)運動部活動に参加している生徒のライフスキルに対する信念の形成過程,2)時間的展望の獲得とライフスキルに対する信念の関係,を明らかにするために調査を行った。 まず,大学生を対象に,ライフスキルに対する信念の強さを測定するための複数回の調査を行い,ライフスキル信念尺度を作成した。そして,当該尺度及び時間的展望に関する尺度を用い,入学直後の大学生を対象に高校時の運動部活動に関する調査を実施した。その結果,1)ライフスキルに対する信念の形成には,指導者や上級生の影響よりも,実体験や自らの体験を洞察することの方が相対的に強い影響を持つこと,2)ライフスキルに対する信念は運動部活動の肯定的解釈を通して,時間的展望の獲得に間接的に影響を及ぼすこと,3)協調性や礼儀と比較し,時間的展望の獲得には積極的思考や忍耐力といったスキルの獲得が相対的に強い影響を持つこと,が示唆された。 本研究の結果,来年度以降に実施予定のプログラムには,1)ライフスキルに対する信念の形成に向け,実体験とそれに対する洞察を深める,2)ライフスキルの獲得に結びついた経験として,運動部活動を肯定的に意味づけるよう導く,3)失敗を成功の糧とする内容や,困難に耐え抜く経験を含めることにより時間的展望の肯定的変容を促す,などの活動を取り入れる必要性が認められた。 なお,本研究から得られた知見については,国際・国内学会における研究発表(4件)及び,スポーツ指導者を対象とした講習会(1件)を通じて,広く公表した。
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