2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740035
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川平 友規 名古屋大学, 大学院・多元数理科学研究科, 助手 (50377975)
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Keywords | 複素力学系 / Julia集合 / ラミネーション / サリバンの辞書 |
Research Abstract |
1990年代,リュービッチとミンスキーはクライン群に付随する3次元双曲多様体のアナロジーとして,複素力学系に付随する3次元双曲ラミネーションを定義した.特に,クライン群におけるモストウ剛性のアナロジーにより,ある種の複素力学系の剛性定理を証明している.一方で,3次元双曲多様体に比べ,3次元双曲ラミネーションの構造の詳細は限られた例を除きほとんど知られていなかった.今年度は主に,2次多項式の放物的分岐に付随する3次元ラミネーションの変化の詳細について研究し,概ね以下の結果を得た: ●吸引的もしくは放物的周期系をもつ2次多項式について,その付随する3次元双曲ラミネーションは2つのエンド(理想境界)をもち,かつそれぞれはリーマン面ラミネーションになっている. ●2つのエンドのうちひとつは,無限遠点に吸引される点たちに対応するリーマン面ラミネーションで,サリバンのソレノイダル・ラミネーションと呼ばれる.これらの葉ごとの複素構造は多項式を変えても変化しない. ●もうひとつのエンドは,充填ジュリア集合の内部に対応する,吸引的もしくは放物的周期系に吸引される点たちに対応するリーマン面ラミネーションである.これらは放物的分岐にともない,「ある"単純閉測地線"に沿った"ピンチ"および"デーン・ツイスト"」に対応する変化がおきる.このとき,3次元双曲ラミネーションの内部では特別な位相的変化はおき得ない. これらの結果は擬フックス群の擬等角変形にほぼ対応しており,クライン群と複素力学系の類似点を列挙する「サリバンの辞書」という観点からも京美深い.以上の内容について,スイスのローザンヌ工科大学にてポスター発表(2005年5月),トロント大学のフィールズ研究所にて連続講演(2006年1-2月)を行った.
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