Research Abstract |
本年度は,「(1)2次元弾性波動場における弾性係数同定問題」および「(2)鉄とコンクリートの合成梁における接合部の欠陥同定問題」に対する数値解法の開発および数値実験による有効性の検証を中心に研究を実施した. (1)に対しては,ペナルティ関数を基礎とした数値計算アルゴリズムを,複数組観測境界値が与えられた2係数同定問題に対して開発した.開発手法は,当該研究開始前に開発した手法の最小化問題に対する解法を,射影法から変換法の一種であるペナルティ関数法に変更したものであり,数値実験により有効性を実証できた.これにより,無制約最小化問題に対する各種手法を適用することが可能になり,より開発手法の高速化を行う基礎付けを行うことが出来た. (2)は,イタリア・ウディネ大学Antonino Morassi教授,北海道大学大学院中村玄教授,韓国・延世大学Mourad Sini博士との共同研究であり,研究代表者は数値計算部分の開発を担当した.本研究で対象としている問題は,鉄とコンクリートで構成されている合成梁の接合部の劣化を,接合部の剛性係数(ずり剛性,軸剛性)を同定することで推定するものであり,本研究で課題としている係数同定と欠陥同定を併せ持つものである.本研究対象の数理モデルは,双曲型連立偏微分方程式の係数同定逆問題であり,観測値としては,梁片側のNeumann境界値と梁の一部の縦軸方向の変位を仮定した.同定対象の係数を同定する手法として,随伴変分法を採用した.観測値を用いてコスト関数を導出し,Morassi教授らにより求められたGateaux微分を用いて,射影勾配法を基礎とした計算アルゴリズムを導出した.本研究費にて購入したワークステーション(Opteron 265×2,8GB DDR-SDRAM)により数値実験を行い,導出アルゴリズムの有効性を確認できた.本研究の成果について国内関連学会で発表し,現在国際関連雑誌への投稿を準備中である.
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