2006 Fiscal Year Annual Research Report
脊椎動物の左右軸形成を引き起こす遺伝子発現パターンダイナミクスの数理モデル
Project/Area Number |
17740058
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中口 悦史 大阪大学, 大学院情報科学研究科, 助手 (70304011)
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Keywords | 応用数学 / モデル化 / 発現制御 / 反応拡散系 / 数理生物学 / 非線形力学系 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き,本研究課題開始以前より継続している,マウス胚の発生初期段階における左右非対称な発現パターンを示す遺伝子プロセスの数理モデル化に関する、本学生命機能研究科・濱田博司教授らとの共同研究の精密化から始めた.昨年度構築した,このプロセスのモデルを,そのダイナミクスを理論的に平易に説明するために,2元連立偏微分方程式によって定式化した.基礎生物学研究所・望月敦史助教授の協力を得て,非線形力学の手法によってこの方程式の数理解析を行い,このモデルが位置特異的かつ過渡的なパターンを示すことの説明に成功した.この成果をDevelopmental Cell誌にて発表,また国際会議においても1回の口頭発表を行った. 関連するテーマとして,パターン形成過程の数理解析の手法である,無限次元非線形力学系のアトラクタの理論いついて,ドイツ・ミュンヘン工科大学・M.Efendiev教授,宇部工業高等専門学校・大崎浩一助教授らと共同研究を行った.バクテリアのコロニーパターン形成の数理モデルとして知られる走化性方程式に対する,グローバルアトラクタと呼ばれる定常的状態の集合について,複雑さの指標として知られるフラクタル次元の評価を行い,それが走化性の強さを示すパラメータの多項式オーダであることを得た.この成果をAdvances in Mathematical Sciences and Applications誌にて2本の論文に分けて発表,また国内学会においても1回の口頭発表を行った.この成果の精密化に関する論文を現在投稿中である.さらに,走化性方程式の有限要素近似に対するグローバルアトラクタについても検討し,そのフラクタル次元は近似の影響をほとんど受けず,元のグローバルアトラクタのフラクタル次元と同程度のオーダであるという結果を得た.この成果を国際会議で2回,国内学会においても1回の口頭発表を行った.この国際会議報告のうち1つは平成19年中に出版予定である.
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Research Products
(3 results)