2005 Fiscal Year Annual Research Report
タイヒミュラー空間とクライン群の変形空間の複素解析的構造の研究
Project/Area Number |
17740083
|
Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
宮地 秀樹 東京電機大学, 理工学部, 助教授 (40385480)
|
Keywords | タイヒミュラー空間 / リーマン面 / クライン群 / 漸近的タイヒミュラー空間 / 擬等角変形空間 / 関数論 / 解析学 |
Research Abstract |
今年度は漸近的タイヒミュラー空間の複素解析的構造の研究を行った.漸近的タイヒミュラー空間は漸近的ベアス写像と呼ばれる写像によりバナッハ空間の有界領域として埋め込まれる.従って,タイヒミュラー空間のベアス埋め込みの研究と同様に,漸近的タイヒミュラー空間の複素解析的研究のためには,この漸近的ベアス写像及びその像についての研究は不可欠である. この年度行った研究成果は大きく分けて2つである(1)漸近的タイヒミュラー空間の埋め込みの像の内半径と外半径が極値的になるための必要十分条件をリーマン面の幾何に関して特徴づけたこと,(2)漸近的タイヒミュラー空間に対して稠密性問題(タイヒミュラー空間の場合にはベアスによって提示された問題)を定式化し,単位円板の漸近的タイヒミュラー空間の埋め込みの像に関して稠密性問題が否定的であることを証明したこと,である. (1)について:タイヒミュラー空間の内半径と外半径の特徴付けは中西敏浩・山本博夫・J.Vellingにより与えられていた.その特徴付けが漸近的タイヒミュラー空間の場合にも成り立つことを示した.系として,タイヒミュラー空間の場合に内半径と外半径が極値的であることと,漸近的タイヒミュラー空間の場合に極値的であることは同値であることを得た. (2)について:ベアスの稠密性問題とは,擬等角写像の全体が単葉関数の中で(シュバルツ微分の位相のもとで)稠密かどうかを問う問題である.漸近的タイヒミュラー空間はタイヒミュラー空間の商空間なので、この問題は自然に漸近的タイヒミュラー空間にも考えられる.F.Gehringにより普遍タイヒミュラー空間の場合に否定的であることが証明された.しかし,F.Gehringの構成した外点の同値類は漸近的タイヒミュラー空間の境界に存在する.そのため,証明のため,別の単連結領域を構成し,そのリーマン写像のシュバルツ微分が閉包にないことを証明した. 現在,これら結果は論文としてまとめられていて既に投稿中である.
|