2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740096
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
植田 好道 九州大学, 大学院数理学研究院, 助教授 (00314724)
|
Keywords | 作用素環 / C*-環 / HNN拡大 / 融合積 / 自由確率論 / 自由エントロピー |
Research Abstract |
本年度の研究は以下の通りです. 1)研究代表者が導入・解析した群に対するHNN拡大の作用素環類似の研究をさらに進展させた.以前に与えた構成法をほんの少し簡単化することが可能であることに気がついたことがその突破口となった.この発見自体はほとんど自明に類することであるが,結果として,融合積とHNN拡大の間に明快かつ強固の関係があり,HNN拡大から融合積,またその逆に行き来できることがわかった.応用として,以前の仕事で与えたHNN拡大として与えられるフォン・ノイマン環が因子環になるための十分条件を改良し,さらに,HNN拡大として得られるC*-環が単純になるための十分条件を得ることができた.また,融合積C*-環のK-理論公式からHNN-拡大のそれがほとんど自明に導くことができることも指摘した.融合積・HNN拡大共に群論にその源を有しているが,今回発見した相互関係は作用素環において初めて現れる現象で興味深い.これらの結果は既に,インターネット上のプレプリント・アーカイブを利用して発表し,現在,雑誌に投稿中である. 2)自由エントロピーの射影作用素版を研究した.射影作用素版を考えることは通常の確率論の枠組みでいうとスピン系のような確率変数たちの取りうる値がちょうど0と1とか+1と-1のような場合に対応する.今年度の研究成果としは,Voiculescu氏が非可換確率論(作用素還)ならではの手法で定義した自由相互情報量(の「微分」)と自由エントロピーの間に成り立つ不等式を発見した.さらに,自由エントロピーの射影作用素版の基礎理論を整備した.これらの仕事は日合文雄氏との共同研究としてまとめる予定だが,部分的には(1)同様にインターネットを通して発表し,また雑誌に投稿中である. (3)自由確率論の枠組みの確率過程を自由エントロピーへの応用を念頭に研究した.研究課題初年度の今年は先行する研究や手法のの調査・習得などに専念した.
|