2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740096
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
植田 好道 九州大学, 大学院数理学研究院, 助教授 (00314724)
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Keywords | 自由確率論 / エントロピー / 相互情報量 / フォン・ノイマン環 / 融合積 / HNN拡大 / 次元 |
Research Abstract |
自由確率論の枠組みにおける正しい相互情報量が何であるかを調べた. これは以前に日合氏と研究した射影に対する自由エントロピーの自然な発展形であり,また,Voiculescuが1999年頃に発表した仕事を補完するものである.具体的にはランダム行列および自由エントロピーの取り扱いにおいて基本的な自己共役行列の空間とそのユークリッド測度を行列の対角化による写像により固有値の空間とユニタリ行列の空間(正確にはそれの適当な商空間)の直積上の測度空間に変換するテクニックに着目した.1つのランダム行列を考える際は対角化変換より問題は固有値空間上の問題に完全に翻訳されるが(すなわちユニタリ部分の問題への寄与はなくなる複数個のランダム行列を考える場合は実はユニタリの部分がそれらの相互関係の情報の真の担い手になり,またそのユニタリ部分から通常の自由エントロピーの定義と同じ方法で「自由相互情報量」と呼ぶにふさわしい量を得ることができることが分かった.この研究は日合氏らと以前の仕事の自然な延長として行った.研究成果はプレプリントアーカイブに最近発表した. HNN拡大の作用素環版の研究を以前に引き続き行った. 今年度は最近,プレプリントアーカイブに発表された融合積に対する自由エントロピーの研究に示唆を受けてそのHNN拡大版を調べるとともに逆にHNN拡大を通して融合積に貢献しえるかを調べた.具体的な成果として2つの異なる方法で定義された自由エントロピー次元が一致する離散群のクラスがHNN拡大を取る操作で閉じていることを示すとともにその計算公式というべきものを与えた.また,一見異なる融合積の自由エントロピー次元公式を得た.これから,融合積に対する自由エントロピー次元公式を現時点で期待される限りの一般的状況にまで拡張するにはある簡単な場合に考察すれば良いことが分かった.この方向の更なる考察は今後の課題である.部分的には作用素環日米セミナーの講演で報告した.また昨年度書いた論文を改訂し一部分を加える予定である. また,今年度後半は数回海外出張し,関連分野の専門化との情報交換および研究発表を積極的に行った.
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