2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
和南城 伸也 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教務補佐員 (30327879)
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Keywords | 宇宙物理 / 理論天文学 / 理論核物理 / 計算物理 / 元素合成 |
Research Abstract |
本年度は主として超新星爆発の際に形成される原始中性子星からのニュートリノ加熱物質(ニュートリノ風)中における重元素合成の研究を行った。ニュートリノ風では、これまで起源の明らかにされていない速い中性子捕獲元素(鉄より重い元素の大半、例えば、金、銀、プラチナ、ウランなど、質量数100〜200程度)が合成されると推測されている。しかし、超新星の爆発メカニズムが未だに明らかにされていないため、それを実証するのは困難であった。本研究では、原始中性子星の質量やニュートリノ光度等をパラメーターとしたニュートリノ風モデルを用いて元素合成の計算を行い、どのような物理条件においてこれらの重元素が作られるか詳しく調べた。その結果、標準的な原始中性子星のパラメーターを用いたときは質量数130程度の重元素までしか合成されないことが分かった。一方、標準モデルよりエントロピーが2倍以上高い場合は、質量数200程度の元素まで作られることが明らかになった。このような高いエントロピーは、原始中性子星が標準的な質量より40%程度重い場合に実現されることが分かった。他に、今回は考慮していない、磁場の効果や多次元効果によって実現される可能性がある。また、ニュートリノ風では、上述の速い中性子捕獲元素合成だけでなく、速い陽子捕獲反応元素合成が起きることを発見した。これは、爆発直後の陽子過剰なニュートリノ風において、陽子のニュートリノ捕獲反応により生じる中性子が核反応過程を促進する効果によるものであり、これまでに知られていなかった元素合成過程である(ニュートリノ誘起陽子捕獲反応過程)。この核反応過程により、これまで謎とされていた陽子過剰同位体のいくつか(モリブデン92,94やルテニウム96,98など)の起源が説明されることを明らかにした。
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Research Products
(6 results)