2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740110
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
須佐 元 立教大学, 理学部, 助教授 (00323262)
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Keywords | 宇宙物理 / 計算物理 / 理論天文学 / 流体 |
Research Abstract |
本研究では初期宇宙のいくつかの場面で存在の予想される原始組成(水素+ヘリウム)のガスの降着円盤の構造、安定性について調べることを目的とする。初年度は、解析的な方法によって原始組成の標準円盤の構造、安定性について調べた。とくに標準円盤の安定性を調べるためには円盤に鉛直な方向の構造についても対流を考慮して調べる必要があるが、われわれはこれを考慮して円盤のいわゆるΣ-M面上、あるいはΣ-TでのS字解曲線を描き、その安定性をしらべた。その結果、水素の電離に伴う吸収係数の著しい変化による、いわゆるDwarf Novaeタイプの不安定を誘起する熱不安定のブランチは、1)原始組成のガスでも確かに存在し、2)重元素が混じった太陽近傍のガス組成の場合に比べて熱不安定によって誘起されるリミットサイクル振動の振幅が著しく大きくなることがわかった。またこれらの原始組成降着円盤が宇宙初期のブラックホール周りに存在すると、次世代の光赤外望遠鏡で不安定による増光現象を観測できることがわかった。この成果については現在投稿準備中である(Uchiyama Susa & Ohsuga 2006)。またこの解析的な研究と並んで、降着円盤の動的な性質を明らかにすることを目指して輻射流体の計算コードを開発した(Susa 2006)。またそれを世界のほかのコード比較する研究も行った(Iliev et al.2006 submitted)。これらの数値計算コードの開発研究は本来、宇宙初期の第一世代天体の形成問題に適用するものであるが、同時にまた、電離を正しく取り扱えることから不安定な降着円盤の動的振る舞いを明らかにすることができる可能性がある。今後はより動的な計算によって宇宙初期の降着円盤の性質を明らかにしていく予定である。
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