2005 Fiscal Year Annual Research Report
銀河相関解析による空間的バイアスおよび速度バイアスの定量的研究
Project/Area Number |
17740139
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
加用 一者 名古屋大学, 理学研究科, 研究員(COE) (80377928)
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Keywords | 宇宙論 / 宇宙大規模構造 |
Research Abstract |
本研究課題は、質量分布と銀河分布の食い違い「バイアス」を、「空間的バイアス」と「速度バイアス」の二つの視点から、二点相関関数や高次統計量を用いて研究するものである。本年度は「位置バイアス」に関して3本の論文を出版した。 Yahataらとの共著論文では、遠方まで存在し大きなサーベイ体積を取ることができるSDSSクェーサーを用い、100Mpcスケールの二点相関関数を測定した。その結果、クェーサーは強くバイアスされている天体であることがわかり、またその二点相関関数の振舞から宇宙に存在するバリオン量に制限を与えた。この研究は、極近年話題になっているバリオン音波振動を用いた宇宙論パラメータ制限の先駆け的研究である。 Zehaviらとの共著論文では、論文の鍵となる二点相関関数の測定を独立に行い、測定の正確性を確実にした。この論文ではさらに、銀河の大規模構造の中で位置が銀河性質と密接に関わっていると仮定して分布のモデル化を行うことに成功した。 Nicholらとの共著論文では、三点相関関数の測定を行った。この中で、SDSSに見出された数Mpcにわたる巨大な構造"Sloan Great Wall"の存在が、三点相関関数へ大きな影響を及ぼすことを初めて明確にした。 研究計画のもう一つの柱である「速度バイアス」に関しては論文出版にまでは至っていない。しかし、銀河の速度分散を、モデルを仮定することなく測定できる新しい方法を開発し、日本天文学会2006年春季年会に於いて発表を行った。この研究では、銀河の速度分散の絶対光度依存性を調べ、その依存性が現在考えられている銀河形成モデルでは説明できないという可能性を示した。これはつまり、大きな「速度バイアス」が存在することを示唆している。来年度はこの測定をより正確なものにしていくことを目指し、速度バイアスへの理解を深める。
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