2006 Fiscal Year Annual Research Report
統一的に記述した原子核間相互作用を用いた不安定核反応の系統的解析手法の構築
Project/Area Number |
17740148
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
緒方 一介 九州大学, 大学院理学研究院, 助手 (50346764)
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Keywords | 不安定核 / 微視的工学ポテンシャル / 2核子有効相互作用 / 畳み込み模型 |
Research Abstract |
メルボルングループによる複素型2核子有効相互作用を用いた、陽子-原子核間の微視的光学ポテンシャルを高精度かつ簡便に計算する手法の開発に着手した。計算は歴史のあるBrieva-Rook(BR)流の畳み込み模型に基づき、まずこの手法の有効性を陽子一安定核散乱の分析によって検証した。 BRの畳み込み模型では、核子の反対称化に起因する交換項(非局所項)の取り扱いについて、いくつかの近似を行っている。それらの近似の正当性を個々に分析したところ、陽子の入射エネルギーが約60MeV〜200MeVの範囲では、模型が有効に機能することが明らかになった。特に、この畳み込み模型に適用可能なエネルギーの上限があることは、本研究で得られた新しい知見である。 有効相互作用以外に、光学ポテンシャルの構築に必要なものとして、原子核の密度分布があるが、本研究では、実験を用いて現象論的に密度を決定できない、不安定核の領域にも適用可能な、平均場模型(Hartree-Fock計算)によってこれを求めた。すなわち、純理論的に求めた核密度と2核子有効相互作用を用いて陽子一原子核弾性散乱の記述を行った。その結果、断面積の理論計算値は、入射エネルギーが約60MeV〜200MeVの範囲で、陽子-安定核の実験データを非常に良く再現することが確かめられた。 この結果を受け、反応データが存在しない、陽子-不安定核の弾性散乱についても計算を行い、断面積の理論的予言を行った。また、その結果を分析することによって、将来の弾性散乱実験の詳細な解析から、不安定核の半径の情報が引き出せることを示した。
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