2005 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙初期における加速度膨張、物質の生成、密度揺らぎの形成に関する研究
Project/Area Number |
17740156
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
粕谷 伸太 神奈川大学, 理学部情報科学科, 特別助手 (00386806)
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Keywords | 素粒子論的宇宙論 / バリオン数生成 / インフレーション / 密度揺らぎ / 宇宙背景放射 |
Research Abstract |
大きく分けて2つの成果があった。1つは宇宙のバリオン数生成に関するものである。バリオン非対称は10の-10乗程度であることが観測から知られているが、本年度の研究ではこれが素粒子物理の構造の結果であることを示した。特に、階層性のある超対称性標準模型におけるアフレック・ダイン機構によるバリオン生成のシナリオで、超対称性の破れのスケールと電弱理論のスケールの比によってバリオン数非対称が決まることを明らかにした。また、このシナリオの実験に置ける検証の可能性も示唆した。 2つ目は、我々の銀河中心から来る511keVのガンマ線の正体に関するものである。511keVガンマ線は観測によって、陽電子・電子の対消滅で出来ていることがわかったが、その陽電子の起源として通常の天体等では説明できないほどの広がりを持った領域からガンマ線が来ていることも観測された。本年度の研究では、陽電子生成のソースとして、2つの候補を考察した。一つは、Qボールと呼ばれる非位相的欠陥で、Qというチャージがレプトン数である大きなチャージを持ったものを考えた。この特徴として、非常に長寿命で放出する粒子(今の場合、陽電子)のエネルギーを非常に小さく抑えることが、自然に出来る。もう一つは、moduliと呼ばれる非常に軽い粒子で超弦理論に存在する粒子である。特に、本年度の研究では、このmoduliから崩壊した陽電子の対消滅で511keVガンマ線が説明できるときに、moduliから直接的・間接的に放出されるX線やガンマ線が宇宙の背景X線・ガンマ線のフラックスの観測と矛盾しないかを考察した。放出プロセスとして、生成された電子・陽電子からのinternal bremsstahlung、moduliから直接、またはループグラフから来るガンマ線を考えた。その結果、moduliの質量は数MeV以下であるべき、と結論づけた。
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