2006 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマ加熱と粒子加速が銀河・銀河団形成に与える影響
Project/Area Number |
17740162
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 裕 大阪大学, 理学研究科, 助教授 (10332165)
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Keywords | プラズマ / 銀河団 / 銀河 |
Research Abstract |
本年度は銀河団における基礎物理過程に重点を置いて研究を行った。 銀河団はより小さい天体の合体により形成、成長してきたと考えられる。まず、その成長過程を明らかにするために、米国のX線天文衛星「チャンドラ」を用いて、合体中の銀河団A2670とA2107の銀河団ガス(高温プラズマ)の観測を行った。その結果、銀河団の合体中には銀河団の中心コアが異常に小さくなる場合があること、母銀河団に突入してきた小銀河団が、母銀河団との相互作用で破壊されながら母銀河団に吸収されることを明らかにした。 次に銀河団を構成する主要成分である銀河団ガスの基本的な性質を明らかにするために、プラズマ粒子シミュレーションを行った。このシミュレーションは、温度勾配におけるプラズマ不安定の一種、「ワイベル不安定」の成長を明らかにするように特別にデザインされたものである。シミュレーションの結果、温度勾配では磁場が自発的に成長することが明らかになった。この磁場は、銀河団内に存在することが観測的に知られている磁場の起源になりうるものである。 さらに銀河団ガスに次ぐ銀河団の構成成分である、銀河の形成と進化についても調べた。銀河団内の銀河は、銀河団外の銀河と違い、銀河団の銀河団ガスの影響を受ける。銀河は銀河団中を秒速数千キロで運動するので、流体とみなせる銀河団ガスからは、揚力、抵抗力といった、空気力学的な力を受ける。それぞれの力を評価したところ、揚力の効果は無視できるが、抵抗力の効果は無視できず、一部の銀河は長時間経つと銀河団の中心に向かって、落下を始める可能性があることを指摘した。
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