2006 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル外挿の不定性を取り除いた格子QCDの数値的研究による新しい物理の探策
Project/Area Number |
17740171
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
金児 隆志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助手 (20342602)
|
Keywords | 素粒子論 / 計算物理 / 強い相互作用 / 格子量子色力学 |
Research Abstract |
強い相互作用によるハドロンの性質を高精度で調べるために、高エネルギー加速器研究機構設置のスーパーコンピュータシステムを利用した格子QCDの大規模数値シミュレーションを推し進めた。アップ、ダウンクォークは動的に取り入れたが、ストレンジクォークは重く、そのループ効果は小さいと考えられるので、本年度の研究ではクェンチ近似で取り扱った。これまでの多くの研究では結果を現実世界のアップ、ダウンクォーク質量に外挿するカイラル外挿による不定性が問題になっていたが、本研究では、その不定性を抑えるために、有限格子間隔でもカイラル対称性を保つオーバーラップフェルミオンの定式化を用い、また、アルゴリズムの改良によって軽いクォーク質量でシミュレーションを行った。動的なオーバーラップクォークを用いた大規模なシミュレーションを行ったグループはこれまでに無いため、まず、低統計のシミュレーションによって、格子作用に含まれるパラメータと格子間隔、クォーク質量の関係を調べ、また、アルゴリズムを記述するパラメータの最適化に専念した。その後、調節された格子作用、アルゴリズムのパラメータを用いて、高統計のシミュレーションを効率的に行い、ゲージ配位を生成した。 また、生成した配位を最大限に活用し、ハドロン行列要素を高精度で計算するために、任意の点から任意の点へのクォークプロパゲータを計算する手法を検討し、計算プログラムの開発を行った。実際に、一部のゲージ配位を用いて中間子の相関関数を計算したところ、計算精度、必要となる計算機資源の両方の点で、従来の方法により非常に有効であることがわかった。 来年度は、この手法を用い、生成したゲージ配位の上で現象論的に興味深い中間子の形状因子などを高精度で計算することが課題となる。
|
Research Products
(2 results)