2006 Fiscal Year Annual Research Report
ストレンジネスを含むエキゾチック原子核の構造に関する理論的研究
Project/Area Number |
17740174
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
根村 英克 独立行政法人理化学研究所, 岩崎先端中間子研究室, 基礎科学特別研究員 (80391738)
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Keywords | ストレンジネス / 少数多体問題 / 第一原理計算 / クォーク模型 / ペンタクォーク / エキゾチックハドロン / 中間子原子核 / 確率論的変分法 |
Research Abstract |
ストレンジネスs=-1を持った、バリオンの励起状態である、A(1405)が反K中間子と核子との束縛状態であるという仮説を、クォーク模型の立場から調べた。 構成子クォーク模型に基づいた、A(1405)のペンタクォーク状態の5体問題を精密に解くことに成功した。その結果、フレーバSU(3)対称性が破れた場合でも、A(1405)のペンタクォーク状態が、3クォーク状態よりも軽い質量を持つという結果を得た。 この結果は、現象論的閉じ込めポテンシャルを用いた場合に得られた結果であるが、その場合、いわゆるcolor vander Waals力が現れることが知られている。これまでの実験からは、colorvan der Waals力の存在は否定されており、そこから来る余計な引力は、クォーク間のとじこめを、簡単なポテンシャルで置き換えたことによる副作用であると考えられる。そこで、今回の研究では、その効果を除いた場合のエネルギーの期待値の補正がどの程度になるかを見た。 具体的には、以下の様な手順で計算を行った。 (1)閉じ込めポテンシャルに現れるカラーの演算子を、ペンタクォーク系における期待値(-4/3)で置き換え、変分計算を行う。その結果、エネルギー期待値(E1)および波動関数が決まる。 (2)(1)で求めた波動関数を用いて、閉じ込めポテンシャルのカラーの演算子の期待値への置き換えを行わずに、もともとのハミルトニアンの期待値を計算する。このときのエネルギーを(E2)とする。 color van der Waals力を取り除くための、上記の様な操作を一切行わなかった場合のエネルギーの期待値を(EO)と書くことにすると、A(1405)をペンタクォークとみなした場合の期待値の変化は、ハミルトニアンのパラメータセットとしてAL1を用いた場合、 E0=1348MeV→E1=1632MeV→E2=1511MeV となった。また、A(1405)が3クォーク状態にあるとした場合のエネルギー期待値は、E=1539MeVであるので、color van der Waals力の影響を取り除いた波動関数を用いた場合でも、ペンタクォーク状態のA(1405)のエネルギーは、3クォーク状態のエネルギーよりも軽くなることが分かった。
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