2005 Fiscal Year Annual Research Report
カーボンナノチューブにおける電子状態制御と量子輸送現象の理論
Project/Area Number |
17740184
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴浦 秀勝 北海道大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10282683)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 電気伝導 / 電子・格子相互作用 / アンダーソン局在 |
Research Abstract |
金属カーボンナノチューブに一様な外部応力を印加した時の電子状態の変調と電気伝導について,強束縛模型に基づく理論的解析を行った.具体的には,外部応力を印加した結果生じるねじり変形と伸長変形による飛び移り積分の変化として電子・格子相互作用を考慮したところ,エネルギーバンドに変調が見られた.チューブの螺旋度に依存して,アームチェアナノチューブに対してはねじり変形,ジグザグナノチューブに対しては伸長変形により,エネルギーギャップが生じ,この結果は,有効質量模型による解析と一致している.エネルギーギャップ生成により半導体となれば電気伝導が大きく変化すると期待されるが,現実的な変形では,生じるギャップは非常に小さく,わずかなキャリアの注入や有限温度の効果により変形の効果を観測することは難しいように思われる.本研究では,不純物散乱を考慮することにより,外部応力による電気伝導変調がそのような効果で弱められることは無いことを明らかにした.金属カーボンナノチューブでは不純物による後方散乱が量子干渉効果により強く抑制され,コンダクタンスの量子化が実現することが知られている.外部応力による電子状態の変調はこの散乱の抑制機構を阻害し,電気抵抗を生み出す.通常の擬1次元物質は,不純物による不規則ポテンシャルがアンダーソン局在を引き起こし,絶縁体となることと対応して,金属カーボンナノチューブの長さに依存せず量子化されたコンダクタンスは、外部応力の印加により著しく減少し,チューブ長に対して指数関数的に減衰する振る舞いを示すことが明らかとなった.これは,電子状態の変調が小さいとしても,応力による対称性の変化がアンダーソン局在を誘起し,チューブ長が大きな極限では伝導が強く抑制される,と解釈することができる.
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Research Products
(1 results)