2005 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒時間分解発光測定による半導体量子点のキャリア・スピンダイナミクスの研究
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17740185
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
冨本 慎一 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 助手 (90396599)
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Keywords | 半導体量子点 / フェムト秒分光 |
Research Abstract |
研究期間初年度の本年は、III-V族化合物半導体を中心とする量子点試料においてフォトルミネッセンス(PL)のフェムト秒時間分解測定を行うため、アップ・コンバージョン法に基づく測定系を製作した。実測した時間分解能はモードロック・チタンサファイアレーザーを光源とした場合150fs(再生増幅光を用いた場合は300fs)程度であり、インジウム燐バルク試料のバンド間遷移にともなうPLの時間変化を実際に測定することにより装置としての性能を確認した。 この装置を用いて、ガリウム砒素基板上に成長させたインジウム砒素自己形成量子点(1cm^2当り約10^<10>個の面密度)のPLを測定した。励起エネルギー(1.55eV)は障壁層(ガリウム砒素)の吸収端付近にあり、量子点の基底状態からの発光(1.39eV)を観測することで、障壁層の連続エネルギー状態から量子点基底状態へのエネルギー緩和過程を調べた。励起密度が比較的小さく障壁層に生成した電子・正孔対が1cm^2当り10^<17>個以下の場合、PLの立ち上がりから求めた緩和時間は25ps程度であった。励起密度をより大きくすると緩和時間は10ps程度まで短くなった。これはキャリア間散乱が起きることで、量子点の離散的エネルギー準位間をフォノン放出によって遷移する際に満たされるべきエネルギー条件が緩和されたことを示している。 測定した時間分解PL強度は、アップ・コンバージョンによって生じる和周波光をフォトンカウンティング法で測定して最大毎秒10カウント程度であった。この最大値は試料の量子点面密度で決められており、励起光強度を大きくしても変わらない。PL円偏光度の測定によりキャリアスピンの緩和過程を観察するには、測定カウント数をより大きくしてデータのSN比を改善する必要があり、現在は試料と測定装置の両面で種々の工夫を試みている。
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