2006 Fiscal Year Annual Research Report
B、C及びNのK吸収端近傍X線吸収発光分光による不純物添加ダイヤモンドの電子状態
Project/Area Number |
17740189
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
中村 仁 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (50313416)
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Keywords | ダイヤモンド / ボロン / 超伝導 / 軟X線吸収 / 軟X線発光 / 金属・絶縁体転移 / 電子状態 |
Research Abstract |
本年度は、高ボロン濃度(nB)のボロンドープダイヤモンド(BDD)試料のB-K・C-K吸収端近傍のXASスペクトルで観測されている深いギャップ内準位と超伝導転移温度の相関を明らかにする目的で、より広範囲且つ詳細なnBのBDD試料に対してB-K及びC-K XAS・XES測定を行なった。特に従来の試料では、nBとキャリヤ濃度、超伝導転移温度(Tc)の相関が明確でなかったため、同一のnBでTcの異なるBDD試料について重点的に実験を行なった。また、第一原理バンド計算と比較した。 SIMSで評価されたnBが同程度でTcの異なる(III)試料のB-K、 C-KのXASスペクトルで、いずれもTcの低い試料で深いギャップ内準位が大きくなる傾向が観測された。ドーパントのBが有効にキャリヤを作るにはその不純物準位がフェルミ準位近傍にあることが必要であるが、深いギャップ内準位の存在は、Bが有効にキャリヤを生成していない事を意味する。Tcはフェルミ準位の状態密度に強く依存するので、深いギャップ内準位を生成している試料ではTcは低くなり、矛盾しない。キャリヤ密度との相関は未だ不明瞭であるが、これはヒロック等の欠陥が原因で正確な見積もりが困難であるためと考えられる。 この深いギャップ内準位の起源が明らかになれば、その状態の生成を防ぐことが高いTcに繋がると考えられる。その目的で、小口による、1)格子間位置に入ったB、2)成膜時に取り込まれる水素とのBH結合状態及び、3)置換位置のBB結合状態についての超格子モデルを用いた第一原理バンド計算の結果(部分状態密度)と比較した。その結果、今回の実験結果を矛盾無く説明出来るユニークなモデルは無く、実際に複数の要因(2)及び3))が関与していると考えられる。実験的には今後、脱水素の試料作成手法を確立する必要がある。
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