2005 Fiscal Year Annual Research Report
競合する電子相を有するハロゲン架橋金属錯体の光誘起電子スピン共鳴法による研究
Project/Area Number |
17740191
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 久暁 名古屋大学, 大学院・工学研究科, 助手 (50362273)
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Keywords | ハロゲン架橋金属錯体 / 電荷密度波(CDW) / スピン密度波(SDW) / ソリトン / ポーラロン / 光誘起電子スピン共鳴 / 光伝導 |
Research Abstract |
擬一次元ハロゲン架橋金属錯体(MX及びMMX鎖)を電子スピン共鳴(ESR)法、光誘起ESR(LESR)法により研究した。MX鎖として、新規に合成されたNi及びPdの混合金属錯体Ni_<1-x>Pd_x(R,R-bn)_2Br_3 (bn=ブタンジアミン)を用いた。この物質では配位子の異なる同型物質Ni_<1-x>pd_x(chxn)_2Br_3 (chxn=シクロヘキサンジアミン)と同様に、電荷密度波相(CDW相;Pd^<2+>-Pd^<4+>)とモット・ハバード相(Ni^<3+>)が競合する。ESR測定の結果、混合金属錯体ではPdのCDW相が消失し、Pd^<3+>が生成されていることがスピン磁化率やg値、線幅の混合比率依存性から明らかになった。他方、CDW相とモット・ハバード相の境界は、(bn)塩では(chxn)塩と比較するとNi混合比率の大きい領域にシフトし、PdのCDW相がより安定化していることが示唆された。これは、(bn)塩では配位子を介した鎖間相互作用が強く、二次元的なCDW相が形成されているためだと考えられる。 また、MMX鎖として、高温ではPt^<2.5+>の平均原子価相(金属相)、低温では非磁性的な交互電荷分極(ACP)相[Pt^<2+>-Pt^<3+>-Pt^<3+>-Pt^<2+>]を持つPt_2(n-pentylCS_2)_4Iを取り上げた。低温のACP相において理論的に予測されている光によるソリトン生成の有無を検証するために、LESRを測定した。その結果、可視光照射により増加するスピン種(Pt^<3+>)のLESR信号が検出された。増加したLESR信号の線幅は暗状態のESR信号に比べて尖鋭化が観測された。従って、光生成されたPt^<3+>は運動を伴うスピンソリトンであることが示された。一方、光照射により暗状態のESR信号強度が減少する負のLESR成分を同時に検出した。これは、光誘起されたソリトンが暗状態で存在しているスピン(ソリトン)とシングレットを形成するためだと考えられる。負のLESRはソリトンの光生成が起こるMX鎖では観測されていないが、MMX鎖ではソリトンの非局在性が強く、鎖の末端に位置する暗状態のソリトンと強く相互作用するため負のLESRが観測されたと考えられる。
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Research Products
(7 results)