2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17740193
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
浅野 建一 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (10379274)
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Keywords | 一次元電子-正孔系 / 励起子 / 励起子分子 / モット転移 / ボゾン化法 |
Research Abstract |
ノンドープの半導体を光で強励起し、伝導帯に電子、価電子帯に正孔を多数作ると、電子-正孔系を実現できる。本年度は、これらの電子と正孔を擬一次元構造に閉じ込めた一次元電子-正孔系についての理論的研究を進めた。電子と正孔は再結合する前にバンド内で速やかに緩和するため、電子-正孔系は準熱平衡状態に達する。そこで、高電子-正孔密度領域における一次元電子-正孔系の基底状態と低エネルギー励起についてボゾン化法を用いた考察を行った。 その結果、電子-正孔の電荷密度励起およびスピン密度励起にギャップが開き、基底状態が絶縁体的であることが明らかになった。これにより、絶対零度では励起子モット転移が起こらず、系は高電子-正孔密度が低い極限から高い極限に渡って常に絶縁体であることが示された。また、低エネルギーの励起が、ギャップレスの電子-正孔の粒子密度励起によって支配されていることを明らかにし、この励起モードを記述する朝永-Luttingerハミルトニアンを考察して、基底状態が電子と正孔の電荷密度波が同期した励起子分子結晶としての性格を持っていることを示した。 温度をギャップのエネルギースケール以上に上げると、系は金属的な朝永-Luttinger液体となる。相互作用が長距離クーロン相互作用であれば、この場合でも非常に強い励起子分子的な相関が残っていることを明らかにした。 さらに、絶対零度における光吸収・利得スペクトルのフェルミ端近傍における構造ついても議論した。電荷密度励起およびスピン密度励起にギャップが開くことに対応し、ギャップ構造が現れること、スペクトルが冪的なテールを引くことを明らかにした。このギャップ内にホロン-アンチホロンの束縛状態に対応した孤立ピークが現れる可能性もあり、これについて考察を開始した。
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