2005 Fiscal Year Annual Research Report
X線回折・散乱による半導体表面上低次元金属の相転移研究
Project/Area Number |
17740206
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
田尻 寛男 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門構造物性Iグループ, 研究員 (70360831)
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Keywords | 半導体表面 / X線回折・散乱 / 放射光 / 表面相転移 / 低次元金属 |
Research Abstract |
本研究は、金属吸着半導体表面の相転移機構を、放射光X線回折・散乱により構造解析の観点から明らかにするものである。研究実施初年度にあたる本年度は、測定装置の整備、測定手法の確立を目的とした。 まず、表面相転移由来のX線回折・散乱は微弱なシグナルであるため、バックグラウンドを極力抑えること、精度の高い測定を行うことが重要である。そこで、入射X線による散乱ノイズを除去すべく遮蔽能力の高いX線遮蔽機構を超高真空X線回折装置に組み込み、効果的にバックグラウンドを低減させた。さらに、従来法に比べ高精度測定が可能な透過X線回折法を表面X線回折に適用(透過表面X線回折法)できるよう試料ホルダを新たに製作した。透過X線回折測定では、試料基板からのX線熱散漫散乱を低減させる必要もあり、できるだけ薄い試料基板が求められる。そこで、シリコン基板を化学エッチングにより一部薄膜化する技術の開発を行い、最も薄い領域で数ミクロン厚の基板が作製可能となった。 次に、試料温度、殊に相転移温度付近での精度の高い温度制御方法の確立は重要である。直接通電による試料加熱と液体窒素冷却装置の組み合わせにより、試料温度を1400Kから120Kまで調整可能にした。特に、室温から120Kに至る温度領域では熱電対により試料温度をモニターしフィードバックをかけることで1K程度の精度で試料温度を調整できるようになった。 以上、装置整備の後放射光実験を行った結果、試料のその場作製から温度制御したX線回折・散乱測定にいたる一連の手順に問題はなく、新手法である透過表面X線回折法により表面再構成構造由来の分数次反射を精度よく測定することができた。 次年度では、銀を吸着させたシリコン表面について相転移温度近傍のX線臨界散乱の温度依存性を詳細に調べ、その相転移機構を解明する。
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