2005 Fiscal Year Annual Research Report
強磁場ESRによる磁気誘起超伝導体のπ-d結合の評価とミクロ相制御
Project/Area Number |
17740207
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大島 勇吾 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (10375107)
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Keywords | 有機伝導体 / π-d系 / 磁場誘起超伝導 / 電子スピン共鳴 |
Research Abstract |
本研究における本年度の目的は、強磁場ESRを用いることによるπ-d相互作用の機構の微視的解明である。そのため先ず最初に、強磁場ESR測定装置の開発を行った。今回開発した強磁場ESR測定プローブは、試料の角度を磁場中で微細に制御することが可能であるピエゾ駆動ローテーターをいつでも組み込めるように設計してある。尚、強磁場及び極低温で使用できるチタン製のピエゾ駆動ローテーターとそのコントローラーを備品として購入した。 次にこの強磁場ESR測定プローブのテストを標準試料であるDPPHで行い、正常に動作する事を確認した後に、代表的なπ-d系有機伝導体での測定を試みた。 まずλ-(BETS)2FeCl4の常磁性相で測定を行ったところ、1つのESR信号が得られた。これはこの系のπ電子とd電子に無視できない交換相互作用が存在することを意味し、これまでの測定より、この系のπ-d相互作用は少なくとも15Kであることが見積もられている。また、ESR信号の周波数依存性より、スピンが磁気異方性を持っていることが判明した。このような特徴的な振る舞いを持つために、この系は強磁場中で磁場誘起超伝導となると考えられる。 次にβ-(BDA-TTP)2FeCl4のESR測定を行った。この系は120Kで金属絶縁体転移を起こすのだが、不思議なことに金属相で低次元磁性体のような振る舞いを示す事がESRの測定よりわかった。この振る舞いは絶縁相で消失することから、この系にも伝導性を担うπ電子と磁性を担つd電子の間には無視できない相互作用が存在することが判明した。また反強磁性相の詳細なESR測定よりこの系は9K以下で2軸異方性の反強磁性体となる事がわかった。 このように代的なπ-d系有機伝導体でESR測定を行うことにより、いままで得られなかった電子状態などのミクロな情報が本研究で得られた。
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