2005 Fiscal Year Annual Research Report
磁場差起超伝導を示す有機導体における磁気相関の微視的研究
Project/Area Number |
17740213
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤山 茂樹 東京大学, 大学院・工学系研究科・研究拠点形成特任講師 (00342634)
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Keywords | 強相関電子系 / 有機導体 / 核磁気共鳴 / 磁場誘起超伝導 |
Research Abstract |
擬一次元的電子相関をもつ(TMTSF)2Xや、二次元系(BEDT-TTF)2Xに代表される有機導体は、陰イオンXを置換する化学的制御、圧力を加える物理的制御により、電気的、磁気的にさまざまな基底状態が実現する。BEDT-TTF分子の一部のS原子をSeに置換し、分子間相互作用をより強くすると考えられているBEDT-TSF(以下BETS)分子を用いた二次元系有機導体k-(BETS)2GaCl4においても超伝導が発現することが見いだされている。 近年、陰イオンとして磁性イオンを導入したk-(BETS)2FeBr4に外部磁場を印可していくことにより、ゼロ磁場反強磁性体から、磁場印可による強制強磁性をともなう金属に転移し、さらに12Tという強磁場領域において超伝導(Tc=0.3K)が発現することが見いだされた。物理的に、磁場は超伝導の対破壊をもたらすため、こういった物質は過去にほとんど例がない。この磁場誘起超伝導は、秩序化したFeの局在スピン(S=5/2)からBETS分子が感じている磁場を、外部磁場によってキャンセルすることによって引きおこされる、と現象論的に提案されていたが、磁場補償機構を媒介とした超伝導発現機構が本当に実現するかどうかは40年来の懸案であった。 私は、本年度、k-(BETS)2FeBr4のBETS分子内のSe原子核を用いたNMRの周波数シフトの測定から、伝導電子と局在dスピンの間に反強磁性的なJ=6Kの磁気的相互作用があることを定量的に評価することに成功し、上記磁場補償機構を媒介とした磁場誘起超伝導発現が実現していることを始めて実験的に示した。
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