2006 Fiscal Year Annual Research Report
高分解能角度分解光電子分光を用いた高温超伝導体の新奇な伝導現象の解明
Project/Area Number |
17740214
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 鉄平 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (10376600)
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Keywords | 高温超伝導体 / 角度分解光電子分光 / 擬ギャップ |
Research Abstract |
高温超伝導体La_<2-x>Sr_xCuO_4(LSCO)の角度分解光電子分光(ARPES)を行い、フェルミ面上のエネルギーギャップの方向依存性を調べた。過少ドープ領域、最適ドープ領域ともに単純なd-波の依存性からのズレが観測され、(π,0)付近の擬ギャップとノード方向付近の超伝導に関連したギャップの2種類のギャップが存在することが明らかになった。非超伝導相の希薄ドープ領域においてノード付近のギャップ大きいことから、超伝導の前駆現象が起こっていると考えられる。また、準粒子ピークの見える領域(フェルミ・アーク)がホールドープとともに伸びてゆくことは超伝導転移温度T_cが大きくなってゆくことを定性的に説明すると考えられる。 LSCOの角度積分型光電子分光の温度変化を測定することにより、擬ギャップの組成依存性と超伝導ギャップの組成依存性が異なることを示した。擬ギャップはホールドープ量が少なくなるにつれ大きくなる。一方、超伝導ギャップはほとんどドープ量依存を示さない。このことは両者の微視的な起源が異なることを示していると考えられる。 電子ドープ系高温超伝導体ではランタノイドサイトLnの違いによって超伝導転移温度T_cが系統的に変化する。Ln_<2-x>Ce_xCuO_4(Ln=Nd,Sm,Eu)のARPESを行いフェルミ準位近傍の電子状態の違いを調べた。NdからEuに行くに連れてフェルミ面の曲率を表すタイトバインデイングパラメータ,-t'/tが小さくなり、同時に対角方向のエネルギーギャップが大きくなる様子が観測された。-t'/tの変化は格子定数の減少がもたらす効果であると考えられ、LSCO薄膜で観測されている効果と定性的に一致している。また、対角方向のエネルギーギャップの増大がT_cを抑制していることが明らかになった。
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