2005 Fiscal Year Annual Research Report
多数の微小結晶を用いた中性子散乱による高温超伝導体に共通する磁気励起の探索
Project/Area Number |
17740217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 直人 東京大学, 物性研究所, 助手 (30376652)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 中性子散乱 / 磁気励起 / 微小結晶 |
Research Abstract |
重要な物理学上の未解決問題の一つとして高温超伝導銅酸化物における磁性と超伝導の相関があるが、最近2つの異なる高温超伝導体、La_<2-x>Ba_xCuO_4系とYBa_2Cu_3O_<6+x>系で共通に観測された磁気励起スペクトラムが、もう一つの代表的な高温超伝導銅酸化物の系であるBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+x>(Bi2212)系に存在するか中性子散乱により確かめる事を本研究の目的としている。Bi2212系の大型単結晶育成は困難な事から、大型単結晶試料の必要な中性子散乱はこれまであまり研究が進んでこなかった。本研究は微小な試料を精度良く並べる事でその困難を克服しようとする点に特色があるが、今年度はその第1段階として、Bi2212系最適ドープ組成の単結晶の軸を精度よく合わせて並べる事により、総計0.6ccの体積を持つ試料をモザイクネス2度以内に収める事に成功した。これは過去の中性子散乱実験で使われた試料体積の約10倍にあたる。また、この試料を用いて日本原子力研究所、および世界で最高の中性子線束強度を誇るアメリカのオークリッジ国立研究所において中性子散乱実験を行った。その結果、少なくとも過去に報告されているエネルギー43meV、反強磁性反射点(π,π)に出現する磁気散乱(レゾナンスピーク)は観測されず、絶対値の較正結果から、そのような散乱があるとしても過去の報告値の1/10以下である事を明らかにした。しかし、過去の報告例を否定する為にはあらゆる可能性を考慮すべきである事から、現在、超伝導特性の向上、試料の純良化、さらなる大型化をすすめている。
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