2006 Fiscal Year Annual Research Report
多数の微小結晶を用いた中性子散乱による高温超伝導体に共通する磁気励起の探索
Project/Area Number |
17740217
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 直人 東京大学, 物性研究所, 助手 (30376652)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 中性子散乱 / 磁気励起 / 微小結晶 |
Research Abstract |
重要な物理学上の未解決問題の一つとして高温超伝導銅酸化物における磁性と超伝導の相関がある。T_cにスケールする励起エネルギーを持つ磁気レゾナンスピークはその一例であるが、高温超伝導発現のメカニズムに反強磁性スピン揺らぎがどのように関わっているのか未だ明らかになっていない。また、単結晶育成の困難さからホールドープ系では、LSCO、YBCO系以外での中性子散乱の研究はあまり進んでいない。本研究の目的は、もう一つの代表的なホールドープ系高温超伝導銅酸化物であるBi2212系の磁気散乱を調べ、LSCO、YBCO系で観測された磁気励起スペクトラムのユニバーサリティを検証する点にある。平成17年度はBi2212最適ドープ組成の単結晶を6個アセンブルして0.6ccの体積を持つ試料の非偏極中性子散乱実験を行い、過去の中性子散乱実験で報告されているE=36-46meV、(π,π)に散乱ピークを我々の測定でも観測したが、T_c前後で強度が変化しない事、磁気形状因子による変化を示さない事からピークが磁気的な起源を持つものか断定できなかった。平成18年度は体積を2.5ccに増やし、ピークの起源を探る為に非偏極および偏極中性子実験を行った。2.5ccの試料体積は過去の中性子散乱実験で使われた試料体積の約40倍にあたり、データのクオリティは劇的に向上している。まず、非偏極実験において、過去に報告されたレゾナンスピークを我々の試料においても確認し、続いて、磁気的な成分のみを抽出できる偏極中性子実験を行ったところ、非偏極実験で観測されたピークは磁気的ではないという、過去の報告を否定する実験結果を得た。しかし、偏極中性子散乱の強度は非常に弱く、レゾナンスピークが"磁気的で無い"事を証明するには、更なるデータの質の向上が必要である。本年度は更に体積を増やし、偏極中性子散乱実験を行う予定であるo
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