2006 Fiscal Year Annual Research Report
圧力誘起磁気量子相転移と重い電子系超伝導の極低温高圧下NMR/NQR法による研究
Project/Area Number |
17740225
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
川崎 慎司 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 講師 (80397645)
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Keywords | 核磁気共鳴 / 重い電子系 / 異方的超伝導 / 低温 / 高圧 |
Research Abstract |
充填スクッテルダイト化合物PrOs_4Sb_<12>は、超伝導転移温度T_C=1.85Kの超伝導体であり、T_cにおいて非常に大きな比熱の跳び(500mJ/molK^2)が観測されたことから、Pr化合物としては初めての重い電子系超伝導体として注目を集めている。これまでに、等方的な超伝導ギャップの存在を示唆する実験がある一方、熱伝導の角度依存性やPr(Os_<1-x>Ru_x)_4Sb_<12>のNQR測定結果は、超伝導ギャップにノードが存在を示唆している。この重い電子系超伝導を理解する上で重要なのは、Pr^<3+>イオンがもつ局在f電子の、結晶場(CEF)によるエネルギー準位の分裂で、PrOs_4Sb_<12>の結晶場基底状態と第一励起状態までのエネルギー差(Δ_<CEF>)はおよそ10K程度と非常に小さい。加えてf電子を持たないLaOs_4Sb_<12>は典型的なBCS超伝導体であり、この小さなΔ_<CEF>がPrOs_4Sb_<12>の重い電子状態や異方的超伝導発現機構の起源であることが期待されている。 本研究では、PrOs_4Sb_<12>の超伝導発現機構に対する新たな知見を得るために、PrOs_4Sb_<12>の圧力下Sb-NQR測定を行った。これまでに、加圧により結晶場分裂Δ_<CEF>の大きさ及びT_Cが減少することを見出した。超伝導状態に関しては、P=1.91GPaにおいてT_C=1.55K以下の十分低温でスピン-格子緩和率1/T_1がT^5のべき乗則に従い、かつT_C以下の1/T_1の温度依存性が、超伝導ギャップにポイントノードを持つABM状態を仮定するとよく再現できることを示した。本研究の結果は、PrOs_4S_<12>の超伝導はギャップにポイントノードを持つことを示し、本物質が非従来型の超伝導体であることを強く示唆するものである。
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