2005 Fiscal Year Annual Research Report
スピンギャップ系における強磁場下低エネルギー励起の直接観測
Project/Area Number |
17740233
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
稲垣 祐次 九州大学, 大学院理学研究院, 博士研究員 (10335458)
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Keywords | スピンギャップ / 強磁場 / 低エネルギー励起 / ESR |
Research Abstract |
本研究は電子スピン共鳴(ESR)を測定手法とし、スピン系における低エネルギー励起を直接観測することを目標とするものであり、初年度である17年度は主に測定環境を整備することに集中した。ESR測定自体は広く一般に用いられている手法であるが、本研究では強磁場下、極低温下で行うことが最大の特色であり、ヘリウム3ガスを凝縮させて最低到達温度0.5ケルビンを実現、また、現有する9テスラ超伝導マグネットを併用しての測定を行う。科学研究費補助金を有効に活用し、ヘリウム3ガスハンドリングシステム、QバンドESR測定用プローブを作成し、既に標準試料(硫酸銅)を用いたテスト実験を終え、本確定な測定を開始している。具体的には測定の対象とした通称CHpCと呼ばれるCu^<2+>(S=1/2)の量子スピンギャップ系において、前例のない極めて特徴的なESRスペクトルの温度依存性を観測することに成功し、現在、解釈を検討すると共に、学術雑誌に早急に投稿すべく準備中である。また、現在測定可能な周波数はQバンド(34GHz)のみであるが、現在、Kバンド(24GHz)、Xバンド(10GHz)でも測定可能なようにプローブを作成中であり、実現すればスピンギャップ系における低エネルギー励起、磁場誘起量子相転移に関する極めて貴重な知見が得られることは確実であり、更なる研究の発展が期待される。また、上述のESR測定と平行し、予備実験として行っている強磁場磁化過程測定の結果のいくつかについても研究成果として学術雑誌に投稿した。
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